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LBO(レバレッジド・バイアウト)モデルとは?仕組みと作り方を数値例で解説

公開 2026.09.12更新 2026.09.12読了 約10
カイロウカイロウUSCPA全4科目一発合格(9ヶ月・働きながら)× KAIRO開発者

LBO(レバレッジド・バイアウト)とは、買収資金の多くを借入(デット)で調達して企業を買収する手法です。結論から言うと、借入を使うことで買収に必要な自己資金(エクイティ)を小さく抑えられ、その分だけエクイティ投資家のリターン(IRR)を引き上げやすくなります。ただし、借入を増やすほど返済負担とリスクも大きくなります。この記事では、架空の数値例を使って、簡易LBOモデルを最初から最後まで組み立てながら、この仕組みを確認します。


LBOとは何か、なぜ借入を使って買収するのか

企業を買収する際、資金をすべて自己資金(エクイティ)で賄うことも理論上は可能です。しかしLBOでは、買収価格の多くを借入で調達し、残りをエクイティで賄います。この借入を「レバレッジ」と呼び、レバレッジを効かせた買収であることから「レバレッジド・バイアウト」と呼ばれます。

借入を使う最大の理由は、エクイティ投資家が投じる自己資金を小さくできる点にあります。同じ買収価格・同じExit時の企業価値であっても、自己資金が小さいほど、その自己資金に対するリターン(倍率・IRR)は大きくなります。これがレバレッジ効果の基本的な考え方です。買収先企業が生み出すキャッシュフローで借入を返済していくため、投資期間中に借入残高が減り、Exit時にはエクイティ投資家の取り分がその分だけ増える構造になっています。

一方で、借入には金利負担があり、借入返済が滞れば財務破綻のリスクも生じます。LBOの対象として好まれるのは、キャッシュフローが安定していて借入の返済能力が高い企業である、という点も押さえておく必要があります。

簡易LBOモデルの構築ステップ

簡易的なLBOモデルは、大きく次の4つのステップで組み立てます。

  1. 買収価格を設定する(EBITDA倍率を使うのが一般的)
  2. 資金調達構成(デット/エクイティ比率)を決める(Sources & Uses)
  3. 将来のキャッシュフローで借入を返済するスケジュールを組む
  4. Exit時点の企業価値からエクイティ投資家のリターン(IRR・MOIC)を算出する

以下、架空の企業を例に、それぞれのステップを確認します。単位は「百万円」とし、税金や運転資本の細かい調整は省略した簡略化したモデルです。

ステップ1: 買収価格の設定(EBITDA倍率)

LBOでは、買収価格をEBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)の倍率で表すのが一般的です。ここでは、対象企業のEBITDAを100と仮定し、買収価格(企業価値)をEBITDAの8倍=800と仮定します。

ステップ2: 資金調達構成(Sources & Uses)

買収資金の調達内訳を「Sources(調達)」、資金の使途を「Uses(使途)」として整理したものをSources & Usesと呼びます。ここでは、デット比率60%・エクイティ比率40%と仮定します。

区分 金額
Uses: 買収価格 800
Sources: デット(借入) 480
Sources: エクイティ 320

デット480に対して、借入金利を年8%と仮定します。

ステップ3: 将来キャッシュフローによる借入返済シミュレーション

対象企業のEBITDAが今後5年間、年5%で成長すると仮定します。また、話を単純化するため、各年に生み出されるキャッシュフローのうち、EBITDAの30%相当額をそのまま借入の返済に充当できると仮定します(実際のモデルでは、ここに金利費用・税金・設備投資・運転資本の増減が個別に反映されます)。

年度 EBITDA 返済充当額 期首デット残高 期末デット残高
1年目 105.00 31.50 480.00 448.50
2年目 110.25 33.08 448.50 415.43
3年目 115.76 34.73 415.43 380.70
4年目 121.55 36.47 380.70 344.24
5年目 127.63 38.29 344.24 305.95

5年間で、デット残高は480.00から305.95まで減少しました。この「企業自身が稼いだキャッシュフローで借金を返していく」プロセスこそが、LBOでエクイティ価値が積み上がっていく仕組みの中心です。

ステップ4: Exit時点の株主リターン(IRR・MOIC)の算出

5年後、対象企業をEBITDAの8倍(買収時と同じ倍率)でExit(売却)すると仮定します。

Exit時企業価値 = 127.63 × 8 = 1,021.04

ここから、Exit時点で残っているデット残高305.95を差し引くと、エクイティ投資家の取り分(Exit時エクイティ価値)が算出できます。

Exit時エクイティ価値 = 1,021.04 - 305.95 = 715.09

投資倍率(MOIC: Multiple of Invested Capital)は、Exit時エクイティ価値を当初のエクイティ投資額で割って算出します。

MOIC = 715.09 ÷ 320 = 2.23倍

5年間で投資額を2.23倍にした場合のIRR(内部収益率)は、次の式で概算できます。

IRR = MOICの(1÷保有年数)乗 - 1 = 2.23の(1/5)乗 - 1 ≈ 年17.4%

当初のエクイティ投資額320に対して、5年後に715.09を回収する(その間の配当等は考慮しない単純なケース)場合、年率換算で約17.4%のリターンになる、という計算です。

デットの比率を変えるとIRRはどう動くか

LBOの核心である「レバレッジ効果」を、デット比率を変えたケースで確認します。買収価格800・Exit倍率8倍・返済スケジュールの前提(EBITDAの30%を返済に充当)は共通のまま、デット比率だけを50%・60%(基準)・70%に変えます。

デット比率 エクイティ投資額 Exit時エクイティ価値 MOIC IRR
50% 400.00 795.11 1.99倍 約14.7%
60%(基準) 320.00 715.09 2.23倍 約17.4%
70% 240.00 635.11 2.65倍 約21.5%

デット比率を50%から70%に引き上げると、当初のエクイティ投資額は400から240まで減る一方、Exit時のエクイティ価値の減少幅はそれより小さいため、IRRは約14.7%から約21.5%まで上昇します。これが「借入を使うほどエクイティ投資家のリターンが高くなりやすい」というレバレッジ効果です。ただし、デット比率が高いほど毎年の金利負担・返済負担も重くなり、対象企業のキャッシュフローが計画を下回った場合の財務リスクも大きくなる点は、あわせて理解しておく必要があります。

Exit倍率を変えるとIRRはどう動くか

もう一つの重要な変数が、Exit時の企業価値評価倍率です。デット比率は基準の60%に固定し、Exit倍率を7倍・8倍(基準)・9倍で比較します。

Exit倍率 Exit時企業価値 Exit時エクイティ価値 IRR
7倍 893.41 587.46 約12.9%
8倍(基準) 1,021.04 715.09 約17.4%
9倍 1,148.67 842.72 約21.4%

買収時と同じ8倍で売却できれば約17.4%のIRRですが、Exit時の市場環境や買い手の評価次第で倍率が1ポイント動くだけで、IRRは4〜5ポイント程度変動します。LBOモデルにおいて、Exit倍率が買収時の倍率からどれだけ乖離するかは、DCF法における割引率や成長率の前提と同じくらい、結果を大きく左右する変数です。

3表モデル・DCF法との関係

ここまでのLBOモデルは、話を単純化するために「EBITDAの30%を返済に充当する」という仮定を置きましたが、実際のLBOモデルでは、対象企業の損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書を連動させた3表モデルの中で、金利費用・税金・設備投資・運転資本の増減を個別に織り込んで、毎年のキャッシュフローと返済可能額を算出します。3表がどのように連動するかについては、以下の記事で解説しています。

また、LBOモデルにおける買収価格やExit時の企業価値評価は、EBITDA倍率で簡便的に算出することが多い一方、より精緻に評価する場合はDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)による企業価値評価と組み合わせて検証されることもあります。DCF法の仕組みは、以下の記事で数値例とともに解説しています。

LBOモデルは、3表モデル・DCF法で培った「前提条件を置き、将来のキャッシュフローを組み立て、企業価値を算出する」という基礎的な財務モデリングのスキルの応用形とも言えます。

よくある質問(FAQ)

Q. LBOとM&A(買収)の違いは何ですか?

M&Aは企業買収全般を指す広い言葉で、その資金調達方法は問いません。LBOはM&Aの一種で、買収資金の多くを借入で調達する手法を特に指します。買収資金を自己資金中心で賄う場合はLBOとは呼びません。

Q. デット比率は高いほど良いのですか?

デット比率を上げるほどエクイティ投資家のIRRは高くなりやすい一方、金利負担・返済負担が重くなり、対象企業のキャッシュフローが計画を下回った場合の財務リスクも大きくなります。対象企業のキャッシュフローの安定性や業界特性に応じて、実務では適切なデット比率の水準が検討されます。

Q. 簡易LBOモデルと実務のLBOモデルは何が違いますか?

この記事の例では、返済充当額を「EBITDAの30%」という単純な仮定で計算しましたが、実務のLBOモデルでは、3表モデルの中で金利費用・税金・設備投資・運転資本の増減を個別に予測し、複数の借入(シニアローン・メザニンなど)を階層別に返済順序をつけて管理するなど、はるかに詳細な設計になります。ただし、「借入で調達し、キャッシュフローで返済し、Exit時のエクイティ価値からリターンを算出する」という基本構造は共通です。

Q. MOICとIRRはどちらを見ればいいですか?

MOICは投資額に対する回収額の倍率、IRRはそれを年率に換算した収益率です。同じMOICでも保有期間が短いほどIRRは高くなります。投資の絶対的な倍率を見たい場合はMOIC、他の投資機会や資本コストと比較したい場合はIRRを使う、という使い分けが一般的です。


まとめ

LBOは、買収資金の多くを借入で調達し、対象企業が生み出すキャッシュフローで返済しながら、Exit時のエクイティ価値を積み上げていく手法です。今回の例では、デット比率60%・Exit倍率8倍の基準ケースでIRRは約17.4%となりましたが、デット比率を70%に引き上げると約21.5%まで上昇し、逆にExit倍率が7倍にとどまると約12.9%まで低下しました。借入をどれだけ使うか、Exit時にいくらで売却できるかという2つの変数が、LBOのリターンを大きく左右します。3表モデルやDCF法で培う「将来のキャッシュフローを組み立てる力」は、LBOモデルを理解し、自分で組み立てる力の土台にもなります。

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