DCF法をわかりやすく解説|数値例で見る計算手順と感応度分析
DCF法(Discounted Cash Flow法)は、企業価値評価の中でも特に実務で使われる頻度が高い手法です。「将来のキャッシュフローを予測して、それを現在の価値に割り引く」という考え方はシンプルですが、実際に計算の流れを追ったことがない人にとっては、言葉だけではイメージが掴みにくい分野でもあります。この記事では、架空の数値例を使って、DCF法の計算を最初から最後まで通しで確認します。
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DCF法の全体の流れ
DCF法は、大きく次のステップで進みます。
- 将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を予測する
- 割引率(WACC:加重平均資本コスト)を設定する
- 予測期間のFCFを現在価値に割り引く
- 予測期間の先の価値をターミナルバリューとして見積もり、現在価値に割り引く
- 予測期間のPVとターミナルバリューのPVを合計し、事業価値(企業価値)を算出する
- 事業価値から純有利子負債を差し引き、株主価値を算出する
この記事では、各ステップを架空の企業の数値例で確認していきます。単位は「百万円」とし、あくまで計算の流れを理解するための簡略化した例です。
ステップ1: フリーキャッシュフローを予測する
まず、直近期のFCFを100(百万円)と仮定し、今後5年間は年5%で成長すると仮定します。
| 年度 | FCF |
|---|---|
| 1年目 | 105.00 |
| 2年目 | 110.25 |
| 3年目 | 115.76 |
| 4年目 | 121.55 |
| 5年目 | 127.63 |
それぞれ、前年のFCFに1.05を掛けて算出しています(100→105.00→110.25→115.76→121.55→127.63)。
ステップ2: 割引率(WACC)を設定する
割引率には、株主資本コストと負債コストを、それぞれの調達比率で加重平均したWACC(加重平均資本コスト)を使うのが一般的です。ここでは、WACCを8%と仮定します。
ステップ3: 予測期間のFCFを現在価値に割り引く
各年のFCFを、経過年数に応じてWACCで割り引きます。n年目の割引係数は「1÷(1+WACC)のn乗」で計算します。
| 年度 | FCF | 割引係数(1.08のn乗分の1) | 現在価値(PV) |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 105.00 | 0.9259 | 97.22 |
| 2年目 | 110.25 | 0.8573 | 94.52 |
| 3年目 | 115.76 | 0.7938 | 91.90 |
| 4年目 | 121.55 | 0.7350 | 89.34 |
| 5年目 | 127.63 | 0.6806 | 86.86 |
5年分のPVを合計すると、459.84になります(97.22+94.52+91.90+89.34+86.86)。
ステップ4: ターミナルバリューを算出する
5年間の予測期間より先は、個別に予測を続けるのではなく、「その後は一定の成長率で成長し続ける」と仮定して一括りに評価します。これがターミナルバリュー(継続価値)です。永久成長率モデルでは、以下の式で算出します。
ターミナルバリュー = 5年目のFCF × (1+永久成長率) ÷ (WACC - 永久成長率)
ここでは永久成長率を2%と仮定します。
ターミナルバリュー = 127.63 × 1.02 ÷ (0.08 - 0.02) = 130.18 ÷ 0.06 = 2,169.68
このターミナルバリューは「5年後時点の価値」なので、これも5年目の割引係数(0.6806)で現在価値に割り引きます。
ターミナルバリューのPV = 2,169.68 × 0.6806 = 1,476.65
ステップ5: 事業価値を算出する
予測期間のPV合計と、ターミナルバリューのPVを合計すると、事業価値(企業価値)が算出できます。
事業価値 = 459.84 + 1,476.65 = 1,936.49
この例では、事業価値のうち約76%をターミナルバリューが占めています。DCF法では、5年程度の予測期間よりも、その先の成長を一括りにするターミナルバリューの前提(永久成長率や割引率)が結果を大きく左右するという点は、覚えておく必要があります。
ステップ6: 株主価値を算出する
事業価値は、株主と債権者の両方に帰属する価値です。ここから純有利子負債(有利子負債から現金・現金同等物を差し引いたもの)を引くと、株主に帰属する株主価値が算出できます。ここでは純有利子負債を300と仮定します。
株主価値 = 1,936.49 - 300 = 1,636.49
上場企業であれば、この株主価値を発行済株式数で割ることで、理論上の1株あたり価値が算出できます。
感応度分析: 割引率と成長率で結果はどう動くか
DCF法は前提条件次第で結果が大きく変わる手法です。WACCと永久成長率をそれぞれ変えた場合に、事業価値がどう動くかを確認します。
WACCを変えた場合(永久成長率2%は固定)
| WACC | 事業価値 | 基準(WACC8%)からの変化 |
|---|---|---|
| 7% | 2,328.99 | +20.3% |
| 8%(基準) | 1,936.49 | - |
| 9% | 1,656.27 | -14.5% |
永久成長率を変えた場合(WACC8%は固定)
| 永久成長率 | 事業価値 | 基準(成長率2%)からの変化 |
|---|---|---|
| 1% | 1,713.13 | -11.5% |
| 2%(基準) | 1,936.49 | - |
| 3% | 2,249.19 | +16.1% |
WACCをわずか1ポイント動かすだけで、事業価値は10%台後半から20%程度動きます。永久成長率も同様に、1ポイントの違いで10%以上のインパクトが出ます。DCF法の結果を見るときは、「その数字がどのWACCと成長率の前提で算出されたか」を必ず確認する習慣が重要です。
DCF法の前提となる財務諸表の予測
このDCF法の出発点である「将来のFCF」は、単独で予測するものではなく、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書が連動した財務モデルから導き出すのが実務での基本的な進め方です。3表がどう連動するかについては、以下の記事で解説しています。
DCF法を含むバリュエーションの全体像は、以下の記事で整理しています。
こうしたモデル構築力を客観的に証明する資格として、FMI(Financial Modeling Institute)認定のAFM(Advanced Financial Modeler)があります。AFM試験でも、まさにテンプレートなしで3表モデルを構築する実技が出題されます。
よくある質問(FAQ)
Q. DCF法のFCFはどうやって計算しますか?
一般的には、営業利益に税金の影響を反映し(NOPAT)、減価償却費を足し戻し、設備投資額と運転資本の増減を差し引いて算出します。損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書が連動したモデルの中で計算するのが実務での基本です。
Q. 予測期間は5年でなければいけませんか?
決まりはありません。事業のライフサイクルや成熟度によって、3年から10年程度まで幅があります。成長が安定するまでの期間を予測期間とし、その後をターミナルバリューで評価するという考え方が基本です。
Q. ターミナルバリューの永久成長率はどう決めますか?
対象国の長期的な名目GDP成長率を大きく超えない水準に設定するのが一般的な考え方です。永久に成長率がWACCを超え続けることは理論上ありえないため、永久成長率はWACCより低い水準に設定する必要があります。
まとめ
DCF法は、将来のフリーキャッシュフローを予測し、それを現在価値に割り引いて企業価値・株主価値を算出する手法です。今回の例では、事業価値1,936.49・株主価値1,636.49という結果になりましたが、割引率や永久成長率をわずかに変えるだけで、結果は10%以上動きます。DCF法を読み解く力・組み立てる力は、財務モデリングの実務スキルそのものでもあります。
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USCPA全4科目一発合格(9ヶ月・働きながら)× KAIRO開発者
- 簿記2級からスタートし、留学経験のない純ジャパで働きながら9ヶ月・全4科目に一発合格
- FAR 88点(約300h)/BAR 90点(約200h・約50日)/AUD 84点(約187h・約50日)/REG 89点(約120h・約30日)
- 現在FAS業界に勤務。一次体験と実データに基づき教材を開発し、累計100部超が受験生に活用されています。
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