KAIRO
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4Chapter 4

贈与税の仕組みと遺産税の計算・申告

Part 1: 個人の税務コンプライアンス・プランニングおよびパーソナルファイナンシャルプランニングBlueprint Area I 対応・配点 40-50%2026年新試験範囲読了目安 約155分

章構成を新カリキュラムに刷新しました。旧構成との対応は移行ガイドをご覧ください。

ストーリー(冒頭プレビュー)

🦉 Episode 4: 贈与のたびに税金、というわけではない

登場: 🦉 カイロウ(新人)/💼 先輩(税務部門)/🏢 恩田さん(個人のクライアント)

恩田さんの相談

恩田さんは金物店を営みながら、来年結婚する娘のために新生活の頭金を用意してあげたいと考えていた。金額は300万円ほどを予定しているという。相談に来た恩田さんの表情は、どこか硬かった。

🏢「まとまったお金を渡すと、贈与税がかかるんですよね。知人が贈与税で驚くほど持っていかれたと聞いて、いくらくらい取られるのか正直怖くて」

🦉「その知人の方は、おいくらくらい贈与されたんですか」

🏢「1000万円ほど渡したと聞きました。それで随分な額を納めることになったと、こぼしていたそうです」

カイロウは資料をめくったが、すぐには答えが出てこなかった。贈与税という言葉は知っていても、実際の仕組みまでは頭に入っていない。300万円という数字を前に、頭の中でぼんやり税率をかけ算しようとしている自分に気づいた。

🦉「300万円というのは、一度に渡すご予定ですか」

🏢「はい、結婚式の前にまとめて渡してあげたいんです」

🦉「わかりました。金額にもよると思うので、確認してからご連絡します」

🏢「お願いします。娘のためとはいえ、税金で損をさせたくないので」

🦉「娘さんの結婚式は、来年のいつ頃なんですか」

🏢「春の予定です。それまでに、少しでも安心させてあげたくて」

恩田さんが帰ったあと、カイロウは先輩に相談した。

🦉「贈与するたびに税金がかかるなら、恩田さんは相当な額を覚悟しないといけないですよね」

先輩は少し笑った。

💼「贈与のたびに税金がかかる、と思っている人は多いけど、実はそうでもないんだ」

「たびに」ではなく「枠を超えたら」

事務所の自席で、先輩が続けた。

💼「毎年、1人に対して一定の金額までは、そもそも贈与税を心配しなくていい仕組みになっている。世の中の贈与の多くは、その範囲に収まる」

🦉「じゃあ、恩田さんの贈与も、その範囲内なら税金はかからないんですか」

💼「金額次第だけど、可能性は十分にある。まず調べるべきは、税率じゃなくてその枠の方だ」

カイロウは、自分がいきなり税率や税額の心配をしていたことに気づいた。順番が逆だった。まず見るべきは、課税される部分がどこからなのかということだった。恩田さんの知人の1000万円という話も、その枠を大きく超えたケースだったのかもしれない。

🦉「贈与したらすぐに課税される、というわけじゃないんですね。思っていたより身構えなくてよさそうです」

💼「そういうこと。怖がる前に、まず枠の範囲を知っておくといい」

次に知りたいこと

インプット(冒頭プレビュー)

この章の試験での位置づけ

項目内容
所属エリアArea I:個人の税務コンプライアンス・プランニングおよびパーソナルファイナンシャルプランニング(Tax Compliance and Planning for Individuals and Personal Financial Planning)
Blueprint参照Area I-C(贈与税のコンプライアンスとプランニング)、Area I-D(遺産税のコンプライアンスとプランニング)
エリア出題比率40〜50%(Area I全体)

⏱ 読了目安: 約155分(インプット教材のみ・個人差があります)。一度に読み切る必要はありません。キリのよいセクションで区切って進めてください。

Area Iは科目全体で出題比率が最も高い。贈与税と遺産税は別の税目に見えて、実は1本の税率表・1本の非課税枠を共有する一体の制度である。


前提知識 --- この章に入る前に、分かっているとラクなこと

前提知識なぜ必要か
個人所得税の基本構造(総所得 → 調整後総所得(Adjusted Gross Income:AGI) → 課税所得)贈与税・遺産税は所得税とは別体系の「移転税」であると対比で理解するため(所得税の詳細は別の章で扱う)
資産の取得価額(Basis)の一般原則贈与財産の取得価額の前提になる(詳細は資産取引の章で扱う)
信託(Trust)の基本用語(委託者・受託者・受益者)生前の資産移転スキームや遺産への算入判定で登場する(信託の税務自体は別の章で扱う)
財産の時価(Fair Market Value:FMV)という考え方贈与・遺産のいずれも時価評価が出発点になるため

1. なぜこの論点が必要か(Why)

【Area I 個人税務の全体像】

I-A 個人所得税とAGI → I-B 受動的活動の損失制限 → 【I-C 贈与税/I-D 遺産税】← 今ここ → I-E 個人のFP
「稼ぎ」への課税              損失の使える範囲の制限         生前・死亡時の「資産移転」への課税        資産形成の実践論

ここまでの論点は「1年間にいくら稼いだか」が出発点だった。この章からは、資産を生前に渡すか(贈与)死亡時に渡すか(遺産)という「移転」そのものへの課税に視点が変わる。

もし贈与税だけで遺産税がなければ、死亡直前に全財産を贈与すれば課税を回避できてしまう。逆に遺産税だけなら、生前に少しずつ資産を移せば同じ抜け道が生まれる。この両方の抜け道を塞ぐのが、贈与税と遺産税を1本の生涯非課税枠でつなぐ統一移転税体系(Unified Transfer Tax System)である。生前に使った非課税枠は、死亡時に使える枠から差し引かれる。

この章では、架空の夫婦ロバートとサラを例に、先に死亡したロバートの未使用の非課税枠がサラへ引き継がれ、サラの生前贈与と死亡時の遺産税がどうつながるかを一本の線で追う。


2. 贈与税の基礎構造(Gift Tax Fundamentals)--- 毎年リセットされる財布と、一生に一度しか使えない金庫

2-1. 贈与税とはどのような税か

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