KAIRO
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9Chapter 9

信託と遺産

Trusts and Estates

ストーリー(冒頭プレビュー)

🦉 Episode 9: 見えない器 --- 信託と遺産の課税

ある朝、先輩が事務所に珍しいクライアントファイルを持ってきた。ファイルの表紙には「信託設定に関する相談」と書かれている。

💼「カイロウ、今日は少し毛色が違う。信託(Trust)遺産(Estate)の課税だ。パートナーシップやS Corpとは違うが、パススルーに似た仕組みがある」

🦉「信託って、お金持ちの人が使うイメージがあります」

💼「確かに富裕層が多いが、仕組み自体はシンプルだ。3人の登場人物を覚えろ。設定者(Grantor)が財産を金庫に入れる。受託者(Trustee)が金庫を管理する。受益者(Beneficiary)が金庫から利益を受け取る」

先輩はボードに金庫のイラストを描き、3本の矢印を引いた。


金庫の種類

💼「信託にはまず大きな分岐がある。撤回可能(Revocable)撤回不能(Irrevocable)かだ」

🦉「撤回可能ということは、設定者が気が変わったら金庫を壊して中身を取り戻せるんですか?」

💼「その通り。だから税務上は設定者が実質的に所有しているのと同じ。Revocable trustの所得は設定者に課税される。これをGrantor trustと呼ぶ。一方、Irrevocable trustは設定者が完全に手放している。だから信託自体が独立した課税主体になる」

カイロウは頷いた。支配権を手放したかどうかが分かれ目。論理的だ。

💼「Irrevocable trustの中で、さらにSimple trustComplex trustに分かれる。判定は年度ごとだ」

🦉「年度ごと? 同じ信託でもSimpleになったりComplexになったりするんですか?」

💼「する。Simple trustの要件は3つ。第一に収益を全額分配する義務があること。第二に元本の分配をしないこと。第三にCharitable contributionを行わないこと。この3つを全て満たす年度だけSimple。1つでも欠ければComplex」


DNI --- 信託課税の心臓部

翌日、先輩はDNI(Distributable Net Income)の話を始めた。カイロウにとってこれが最も難しい概念だった。

💼「DNIは信託課税の心臓部だ。3つの機能がある。第一に、受益者に課税される所得の上限を決める。第二に、信託が所得から控除できる金額の上限を決める。第三に、配当や利息の性格を保持して受益者に引き継ぐ」

🦉「上限……つまりDNIを超える分配は課税されないんですか?」

インプット(冒頭プレビュー)

この章の試験での位置づけ

CPA Exam Blueprint(試験設計図) とは、AICPA(米国公認会計士協会)が公式に公表している「試験で何が、どのくらいの比率で、どのレベルで問われるか」を定めた文書です。 全ての出題はこのBlueprintに基づいて作成されます。つまり Blueprintを知ることは、試験の設計者の意図を知ること です。

項目内容
所属エリアArea II -- Personal Financial Planning(個人ファイナンシャル・プランニング)/ Area III -- Entity Tax Compliance
Blueprint参照II-D: Estate and trust planning; III-D: Tax compliance for trusts and estates
エリア出題比率Area II: 15--25% / Area III: 25--35%
求められるスキルレベルApplication(適用) --- DNIの計算、Simple/Complex trustの判定、Tier system、65-day electionを使った計算問題が中心

このChapterのポイント: TCPは信託・遺産をREGより深く・計算重視で問う。DNI(Distributable Net Income)の計算はもちろん、Tier system(一次受益者/二次受益者への配分順位)、Separate share rule、65-day election(§663(b))、Grantor trust rules(§671-679)、圧縮された信託税率表とNIITまで一気通貫で計算させるTBSが頻出する。OBBBA(HR1/P.L.119-21、2025年7月4日成立)により遺産税・贈与税の統一控除額がTY2025 $13.99M→TY2026 $15Mに引き上げられたことは、信託を使った遺産税プランニングの前提が変わる重要な改正であり、本章のプランニング論点と直結する。

前提知識 --- この章に入る前に、分かっているとラクなこと

前提知識なぜ必要か
個人所得税の基礎(Ch1-2)信託・遺産の所得は最終的に受益者の個人申告(Form 1040)に流れ込む。累進税率・NIITの仕組みを前提にする
贈与税・遺産税の統一控除(Ch3)信託の設定・遺産の発生は贈与税・遺産税と表裏一体。OBBBAによる統一控除額の改正が本章のプランニング論点に直結する
パススルー課税の概念(Ch5-7)信託・遺産もパートナーシップに似た「所得配分+性格保持(character pass-through)」の仕組みを持つ
Cash flow / 現在価値の考え方65-day electionや分配タイミングの選択は「いつ・誰に課税させるか」という税率裁定の問題。実効税率の比較感覚が要る

1. なぜこの論点が必要か(Why)

【TCPの全体像マップ】

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