資産の基礎価額(取得・贈与・相続・非課税交換)
章構成をAICPA公式の出題範囲(Blueprint)に沿った新カリキュラムに刷新しました。
ストーリー(冒頭プレビュー)
🦉 Episode 8: 贈与された土地の値段
登場: 🦉 カイロウ(新人)/💼 先輩(税務・法務部門)/🏢 皆川さん(クライアント)
売却の相談
税務・法務部門に配属されて、まだ2週間目だった。今日は先輩と一緒に、皆川さんという個人のお客さんの相談に同席している。机の上には、空き地の売買契約書と、贈与税申告のコピーが広げてあった。窓の外では、隣のビルの工事の音がずっと響いていた。
🏢「この土地は、5年前に父から譲り受けたものです。もらった時の評価額が150,000ドルで、贈与税の申告もそのときに済ませています」
カイロウは贈与税申告のコピーを手に取り、日付と評価額の欄をひとつずつ確かめた。数字はきちんと一致している。
🦉「申告のほうも、控えがちゃんと残っているんですね」
🏢「はい、そこは当時の税理士さんにお願いしました。今度、開発業者に420,000ドルで売ることになりまして。差額の270,000ドルに税金がかかる、という理解で合っていますか」
カイロウは手元のメモに数字を書き写しながら、うなずいた。もらった時の値段と、売る時の値段。その差がそのまま利益になる。ごく自然な考え方に思えた。
🦉「はい、270,000ドルの利益として計算するのが基本になります」
皆川さんが部屋を出たあと、カイロウは自分のメモを先輩に見せた。先輩はページをめくる手を止めて、しばらく数字を眺めていた。
引き継がれる値段
💼「ちょっと待って。この150,000ドルは、何の数字だ」
🦉「皆川さんが土地をもらった日の評価額です。もらった日の値段が、皆川さんにとっての『買った値段』になりますよね」
💼「贈与された資産では、そうはならない。もらった人の基礎価額は、あげた人が最初に払った金額を、そのまま引き継ぐんだ」
先輩の説明はこうだった。皆川さんの父は、何十年も前にこの土地を40,000ドルで買っていた。贈与を受けた日の評価額がいくらでも、基準になるのはその40,000ドルだという。
🦉「なぜ、もらった日の評価額を使わないんですか。皆川さんにとっては、そこが本当の出発点のはずです」
💼「そうしてしまうと、お父さんが持っていた間の値上がり分が、まるごとすり抜けてしまう。だから基礎価額は、あげた人の分から途切れさせない」
🦉「では、利益は420,000から40,000を引いて、380,000ドルになるということですか」
💼「そのとおり。もらった日の値段は、ここでは関係ない」
🦉「梟は目を丸くするのが得意なので、今まさに得意技が出ています」
自分の見積もりが10万ドル以上ずれていたことに、カイロウは素直に驚いていた。契約書の数字は同じなのに、基準にする値段が変わるだけで、答えがまったく違ってくる。
インプット(冒頭プレビュー)
この章の試験での位置づけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所属エリア | Area III --- 資産取引の連邦税務(Federal Taxation of Property Transactions) |
| Blueprint参照 | Area III-A --- 資産の取得原価(税務基礎価額)(Basis of assets) |
| エリア出題比率 | 12%~22%(Area III全体) |
⏱ 読了目安: 約120分(インプット教材のみ・個人差があります)。一度に読み切る必要はありません。キリのよいセクションで区切って進めてください。
本章が扱う「資産の基礎価額(basis)」の決定は、後続の原価回収(減価償却・償却)と処分損益の計算すべての出発点になる。ここを取り違えると、この先の計算が連鎖して狂う。
前提知識 --- この章に入る前に、分かっているとラクなこと
| 前提知識 | なぜ必要か |
|---|---|
| 総所得への算入原則(米国内国歳入法(IRC: Internal Revenue Code)§61) | 資産処分の利得は総所得に算入される。基礎価額は「譲渡益=譲渡対価-基礎価額」の一方の柱になる。 |
| 公正市場価額(FMV: Fair Market Value)の考え方 | 独立当事者間で成立する取引価格という前提。贈与・相続・非課税交換すべての基準点になる。 |
| 保有期間の長期・短期区分 | 通常は取得日から1年超保有で長期扱い。相続財産の自動長期扱いという特則は、この通常ルールを知っているほど際立つ。税率差は後の章で扱う。 |
| 資本的支出と修繕費の違い | 資産化される支出は調整後基礎価額に加算される。「調整後」の中身を知っておくと本章の後がスムーズになる。詳細は原価回収の章で扱う。 |
1. なぜこの論点が必要か(Why)
【資産取引の連邦税務(Area III)の3ステップ】
資産の取得 保有中の費用化 資産の処分
基礎価額の決定 → 原価回収(減価償却・償却) → 処分損益の計算
← 今ここ (次のBlueprintグループ) (さらにその先)
車の走行距離計を思い浮かべてほしい。出発点の数字を書き間違えれば、その日の走行距離だけでなく翌日以降の全記録がずれ続ける。基礎価額(basis)はこの出発点にあたる。譲渡益・譲渡損は「譲渡対価-基礎価額」で決まり、保有中の減価償却費も基礎価額を起点に計算されるため、ここで1つ計算を誤ると以後の税務計算が連鎖して狂う。
厄介なのは、基礎価額が「いくら払ったか」だけでは決まらない点だ。購入資産は支払額がそのまま基礎価額になるが、贈与・相続・交換・出資で取得した資産には、それぞれ別の決定ルールが用意されている。本章はこの取得経緯ごとのルールを、Blueprintのグループ区分に沿って確定させていく。
【取得方法別・基礎価額の決定ルール】
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