ACFRとファンド会計・政府全体財務諸表
章構成をAICPA公式の出題範囲(Blueprint)に沿った新カリキュラムに刷新しました。
ストーリー(冒頭プレビュー)
🦉 Episode 15: まとめられない市役所のお金
登場: 🦉 カイロウ(新人)/💼 先輩(経営分析チーム)/🏢 木下課長(市の財政課長)
財政課での打ち合わせ
カイロウは先輩と一緒に、ある市の財政課を訪れていた。机には分厚い報告書が何冊も積まれている。壁のキャビネットにも、年度ごとにまとめられたファイルがぎっしり並んでいた。今回は、市の財務資料の作り方を確認する仕事だった。
木下課長が見せてくれた資料には、いくつもの表が並んでいた。「一般会計」「道路整備の会計」「水道事業の会計」と、別々に集計されている。
🦉「この水道事業の会計、けっこう大きな金額ですね」
🏢「ええ、水道事業だけで年間8億円くらい動いています。道路整備の会計は、今年は3億円ほどですね」
🦉「同じ市のお金なのに、どうしてこんなに表が分かれているんですか。1つにまとめたほうが見やすいと思うんですが」
🏢「実は、まとめてはいけないんです。水道料金として集めたお金は、水道事業以外には使えない決まりになっていて」
🦉「全部でいくつくらい、財布が分かれているんですか」
🏢「大きなものだけでも十以上あります。道路、公園、学校施設、水道、下水道、それぞれ別です」
🦉「学校施設の会計は、何に使うお金なんですか」
🏢「校舎の修繕や、備品の購入ですね。こちらも他の会計にお金を回すことはできません」
🦉「道路の予算が足りなくても、水道のお金を回せないということですか」
🏢「そうなんです。それぞれ、使い道が最初から決まっているので」
🦉「逆に、道路のお金が余ったときは、他に回せるんですか」
🏢「それも原則できません。余った分は、翌年度以降の道路関係の支出に回すだけです」
先輩の一言
財政課を出たあと、カイロウは先輩に聞いた。
🦉「会社なら、儲かったお金をどこに使うか自由に選べますよね。市役所は違うんですね」
💼「そこが会社との一番の違いだ。市や町のお金には、法律や条例で使い道が決められているものが多い」
🦉「だから、財布を最初から分けて管理しているんですね」
💼「そう。1つの財布にひとまとめにすると、どのお金が何に使われたのか見えなくなってしまう。だから目的ごとに財布を分けて、それぞれの中で収支を管理する」
🦉「水道事業の8億円と、道路整備の3億円も、それぞれの財布の中でしか動かないということですね」
💼「そういうことだ。市民から見ても、水道料金がきちんと水道のために使われているか、財布ごとに確認できるようになる」
🦉「会社の財務諸表とは、そもそもの考え方が違うんですね」
💼「かなり違う。これまで学んできた会社の会計の考え方が、そのまま通用しない部分も多い」
インプット(冒頭プレビュー)
この章の試験での位置づけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所属エリア | Area III: 州・地方政府会計と報告(State and Local Government Accounting and Reporting) |
| Blueprint参照 | Area III-A(年次包括財務報告書の様式と内容)、Area III-B(政府全体財務諸表の導出と調整要件) |
| エリア出題比率 | 10%〜20% |
⏱ 読了目安: 約127分(インプット教材のみ・個人差があります)。一度に読み切る必要はありません。キリのよいセクションで区切って進めてください。
Area IIIは出題比率の幅が最も広く、企業会計とは別の会計基準体系(後述)を扱うため得点差がつきやすい。本章はその入り口として、ACFR(年次包括財務報告書)とファンド会計の骨組み、政府全体財務諸表の作り方までを押さえる。
前提知識 --- この章に入る前に、分かっているとラクなこと
| 前提知識 | なぜ必要か |
|---|---|
| 発生主義における収益・費用の認識タイミングの基本 | 政府全体財務諸表は発生主義で作成されるため、認識タイミングの基本ルールを先に押さえておくと理解が速い |
| 資産・負債・純資産(資本)の基本的な会計等式 | 政府会計では「純資産(net position)」という独自の呼称を使うが、根底にある構造は同じ等式である |
| 減価償却の基本的な考え方 | 政府全体財務諸表では道路・庁舎などの資本資産を減価償却するため、計算の土台として必要になる |
| 財務諸表が複数の利用者(住民・議会・債権者など)に向けて作られるという視点 | 政府会計特有の「説明責任(accountability)」という報告目的を理解する土台になる |
1. なぜこの論点が必要か(Why)
【BARの出題エリア構成】
Area I ビジネス分析 (40-50%)
Area II テクニカル会計と報告 (35-45%)
Area III 州・地方政府会計と報告 (10-20%)← 今ここ
└ 本章(ACFRとファンド会計・政府全体財務諸表)は
Area IIIの出題範囲全体への入り口にあたる
Area IとArea IIで学ぶ会計基準は、企業会計を規律する会計基準体系(Accounting Standards Codification、ASC)にさかのぼる。ところがArea IIIに入ると、根拠となる基準そのものが切り替わる。州・地方政府の会計を規律するのは財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board、FASB)ではなく、政府会計基準審議会(Governmental Accounting Standards Board、以下GASB)が発行する一連の基準書である。FARやAUDで積み上げた会計処理の感覚を無意識に持ち込むと、政府会計では足をすくわれる。
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§ Summary Notes — BAR
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