章構成をAICPA公式の出題範囲(Blueprint)に沿った新カリキュラムに刷新しました。
ストーリー(冒頭プレビュー)
🦉 Episode 12: 売り買いしていないのに動く数字
登場: 🦉 カイロウ(新人)/💼 先輩(経営分析チーム)/🏢 佐野部長(クライアントの経理部長)
明細表の数字
カイロウは先輩と一緒に、飲食チェーンを運営する会社を訪れていた。今日は、来月の決算発表に向けて、投資有価証券の明細表を確認する打ち合わせだった。テーブルには、去年と今年の明細表が並べて置かれている。
明細表には「関連会社株式 ヤマブキ食品(30%保有)」という行があり、去年より評価額が2,000万円ほど増えていた。他の銘柄の欄は、去年とほとんど同じ数字が並んでいる。
🦉「そもそも、なんでヤマブキ食品の株を持っているんですか」
🏢「うちのメニューで使う調味料を、専属で作ってもらっている会社なんです。3年前に出資しました」
🦉「このヤマブキ食品の株、今年買い増したんですか」
🏢「いえ、株数は去年からまったく変わっていません」
カイロウは明細表を二度見した。株を1株も動かしていないのに、金額だけ増えている。
🏢「ヤマブキ食品が今期、けっこう利益を伸ばしたそうなんです」
🦉「ヤマブキ食品の利益と、うちの持っている株の金額が、どうしてつながるんですか」
佐野部長は少し考えてから、先輩に説明を任せた。窓の外では、開店前の店舗スタッフが仕込みを始めていた。
先輩の一言
打ち合わせのあと、カイロウは先輩に聞いた。
🦉「株を売り買いしていないのに、金額が動くなんて、普通の株とは違いますね」
💼「そう、これは持分法という別の扱いだ。30%くらい持っていると、相手の会社の経営にある程度口を出せる立場になる」
🦉「支配とまではいかないけど、影響は与えられる、ということですか」
💼「その通り。そういう投資は、買った値段のまま放っておかない。相手の利益が出れば、その分だけこちらの投資額も増やしていく」
🦉「じゃあ、ヤマブキ食品の利益の30%分だけ、増えたということなんですね」
💼「考え方としてはそうだ。配当をもらえば、逆に投資額を減らす」
🦉「配当をもらったのに、投資額が減るんですか。なんだか不思議です」
💼「配当は、相手の会社に積み上がっていた利益を、こちらが受け取っただけだ。すでに投資額に足し込んである分を、取り崩すイメージだ」
🦉「これがもし5%くらいの保有だったら、どうなるんですか」
💼「その程度なら、相手の利益を追いかけたりしない。買った値段のまま、配当をもらったときだけ収益にする」
カイロウは、フクロウの目をぱちくりさせながら明細表を見つめた。売買していないのに数字が動く感覚に、まだ慣れなかった。手元のメモには、株の割合と数字の関係を、矢印でつなぎながら書き込んでいた。
インプット(冒頭プレビュー)
この章の試験での位置づけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所属エリア | Area II --- テクニカル会計と報告 |
| Blueprintグループ | G(連結財務諸表)のG-5:持分法投資/H:デリバティブとヘッジ会計(H-1〜H-4) |
| エリア出題比率 | 35%〜45% |
⏱ 読了目安: 約128分(インプット教材のみ・個人差があります)。一度に読み切る必要はありません。キリのよいセクションで区切って進めてください。
本章はArea II(テクニカル会計と報告、出題比率35%〜45%)の中でも、持分法投資(Area II-G-5)とデリバティブ・ヘッジ会計(Area II-H-1〜H-4)を扱う。デリバティブ・ヘッジ会計は上級会計としてBARに配置された論点であり、公正価値測定を軸にしたGAAPコード化の密度が高い。
前提知識 --- この章に入る前に、分かっているとラクなこと
| 前提知識 | なぜ必要か |
|---|---|
| その他の包括利益(Other Comprehensive Income、以下「OCI」)と当期純利益の違い | キャッシュ・フロー・ヘッジや純投資ヘッジの評価差額の一部がOCIに計上される仕組みを理解する前提になる |
| 公正価値評価の基本的な考え方 | デリバティブは原則として公正価値で測定されるため |
| 連結財務諸表における「支配」の考え方 | 持分法が前提とする「重要な影響力」との違いを対比する土台になる。連結そのものの詳細は別章で扱う |
| 有価証券の保有目的による分類の基礎 | 持分法投資が、他の有価証券の区分とは異なる会計処理を受ける理由を理解する土台になる |
この4つに共通するのは、「どの評価基準を使うか」という問いへの土台になっている点である。保有目的有価証券は原則として公正価値、持分法投資は取得原価を出発点に投資先の業績を反映、連結は支配下にある資産・負債をそのまま合算する。本章に入る前に、これら3つの評価の出発点が異なるという大枠を意識しておくと、個々の計算手順を覚える負担が軽くなる。
1. なぜこの論点が必要か(Why)
企業が他社の株式を取得する目的は一様ではなく、GAAPは「関係の強さ」に応じて異なる会計処理を用意している。 値上がり益だけを狙う場合もあれば、経営に一定の発言力を持ちたい場合、あるいは完全に傘下に収めたい場合もある。米国において一般に公正妥当と認められた会計原則(Generally Accepted Accounting Principles、以下「GAAP」)は、この関係の強さの違いを議決権比率という目安で区分している。
【投資関係の強さと本章の位置づけ】
保有目的有価証券 持分法投資 連結
(受動的投資) (重要な影響力) (支配)
~20%未満 -------> 20%~50% -------> 50%超
^^^^^^
← 今ここ(本章前半)→
※ 議決権比率はあくまで「推定」の目安。取締役会への参加等の
事実関係により、比率によらず判定が覆ることがある。
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