短期意思決定と業績評価(関連原価分析・振替価格・部門別配賦・ROI)
章構成をAICPA公式の出題範囲(Blueprint)に沿った新カリキュラムに刷新しました。
ストーリー(冒頭プレビュー)
🦉 Episode 6: すでに使ったお金は、この先の判断に関係ない
登場: 🦉 カイロウ(新人)/💼 先輩(経営分析・財務計画の支援チーム)/🏢 大野社長(クライアント製造会社の社長)
300万円かけた機械をどうするか
カイロウは先輩と一緒に、部品を作る製造会社の工場を訪れていた。片隅には、専用に導入した加工機械が、稼働を止めたまま置かれている。
大野社長が機械を見ながら言った。
🏢「3年前に300万円かけて入れた機械なんですが、不具合が多くて。外の業者に頼んだ方が、これからは安く済みそうなんです。でも300万円もかけたのに、今やめるのはもったいなくて」
カイロウも機械を見て、うなずいてしまった。錆の目立つ機械は、たしかにもう新品には見えなかった。
🦉「たしかに、せっかく300万円も出したのに手放すのはもったいない気がします」
先輩は静かに言った。工場の機械音の中で、その声は落ち着いて聞こえた。
💼「その300万円は、機械を使い続けても、外に頼んでも、もう戻ってこない。今考えるべきなのは、これから先、どちらを選ぶと何がいくら変わるかだけだ」
これから変わることだけを見る
カイロウは、先輩の言葉を頭の中で繰り返した。過去に払った300万円は、この先どちらを選んでも変わらない。すでに終わった話と、これから先の話は、性質が違うということらしい。分かったつもりでも、もったいないという気持ちはまだ胸のどこかに残っていた。
🦉「もったいないという気持ちと、これからの判断は、切り離して考えるということですか」
💼「そのとおり。すでに終わったお金の話と、これから先の話を混ぜると、判断を誤る。修理費や、外注した場合の単価など、これから変わるものだけを比べよう」
先輩が数字を尋ねると、大野社長は手元の資料をめくった。
🏢「機械を直すなら、修理費が50万円かかります。外注に出すと、1個あたりの加工費が今より2割ほど高くなります」
🦉「50万円の修理費と、外注に切り替えた場合の加工費の増え方、その2つを比べるということですね」
大野社長は、機械をもう一度見つめてから言った。
🏢「300万円のことばかり気にして、この先の話を全然していませんでした。恥ずかしい話です」
カイロウは、過去に使った金額の大きさと、これからの決断は別問題なのだと気づいた。もったいないという感覚に引っ張られると、見るべきものを見失う。フクロウの自分でも、目の前の金額の大きさにはつい気を取られてしまう。
次に知りたいこと
工場を出たあと、カイロウは先輩に聞いた。
🦉「これから変わる費用だけを比べればいいんですね。でも、どこからどこまでがそれに当たるのか、見分け方はあるんですか」
インプット(冒頭プレビュー)
この章の試験での位置づけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所属エリア | Area I --- ビジネス分析(Business Analysis) |
| Blueprint参照 | Area I-D-9 〜 I-D-12 |
| エリア出題比率 | 40〜50%(BARの中で最大の配点エリア) |
⏱ 読了目安: 約125分(インプット教材のみ・個人差があります)。一度に読み切る必要はありません。キリのよいセクションで区切って進めてください。
この章では、関連原価分析・振替価格・部門別原価配賦・投資利益率(ROI)という4つの技法群(Blueprint Group D-9〜D-12、計11論点)を扱う。どれも「与えられたデータから、意思決定または業績評価に使える数字だけを取り出す」という同じ思考回路の応用である。本章を通じて同じ3社(みなと製作所・ひまわり食品・北斗商事)の例が繰り返し登場するが、これは偶然ではない。同じ会社の数字で考え方を使い回せることが分かれば、本番でも「この論点の型はどれか」を素早く見分けられるようになる。
前提知識 --- この章に入る前に、分かっているとラクなこと
| 前提知識 | なぜ必要か |
|---|---|
| 変動費と固定費の区分 | 意思決定で変化する原価(変動費・回避可能固定費)と変化しない原価を見分ける必要があるため |
| 貢献利益(Contribution Margin。売上高から変動費を差し引いた利益)の考え方 | 特別注文の可否判断や、制約資源下での製品優先順位付けは、貢献利益を土台に判断するため |
| 全部原価計算と直接原価計算の違い | 財務報告用の原価データと、意思決定に使うべき原価データとでは範囲が異なるため |
| デュポン分析(ROE分解、前の章)の考え方 | 本章で学ぶROIは「売上高利益率×投資回転率」に分解でき、デュポン分析と同じ発想を投下資産に当てはめたものであるため |
これら4つの前提知識は、個別の論点というより本章全体を貫く共通言語にあたる。例えば変動費・固定費の区分が曖昧なまま3章の内製外注の例に進むと、「回避可能固定費」という言葉自体でつまずいてしまう。先に共通言語を揃えておくことで、本章の時間を「どの数字を使うか」という本題の判断に使えるようになる。
1. なぜこの論点が必要か(Why)
【BAR Area I: ビジネス分析 --- 原価・意思決定パートの全体像】
財務諸表分析 原価計算の基礎 短期の意思決定と業績評価 資本予算
(前の章まで) (前提知識として整理済み) ← 今ここ(第6章) (この先の章)
│
├─ 関連原価分析(内製外注・特別注文・撤退・追加加工・制約資源)
└─ 振替価格・部門別原価配賦・責任会計・ROI
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§ Summary Notes — BAR
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