原価計算システムの基礎(個別原価計算・総合原価計算・ABC)
章構成をAICPA公式の出題範囲(Blueprint)に沿った新カリキュラムに刷新しました。
ストーリー(冒頭プレビュー)
🦉 Episode 4: この机1台分の原価は、いくらか
登場: 🦉 カイロウ(新人)/💼 先輩(経営分析・財務計画の支援チーム)/🏢 桧山棟梁(クライアント家具工房の工房主)
注文家具の値付けに悩む工房
カイロウは先輩と一緒に、注文家具を手がける工房を訪れていた。木くずとニスの匂いがする作業場には、依頼された学習机が1台、組み立ての途中で置かれている。
桧山棟梁が困った顔で言った。
🏢「この学習机、いくらで売ればいいのか分からないんです。材料と手間はかかっているのに、値段の根拠が説明できなくて。お客さんにも聞かれるんです」
カイロウは、組み立て途中の机の脚や引き出しを見ながら考えた。
🦉「使った木材の金額と、作った職人さんの給料を足せばいいんじゃないですか」
カイロウは頭の中で、木材費3万円と職人の手間2万円を足した。合わせて5万円になる。
桧山棟梁はうなずきかけたが、すぐに首をかしげた。
🏢「それだけじゃない気がするんです。工房の家賃も、電気代も、機械を動かすのにかかっていますし」
先輩は工房の中を見回しながら言った。作業場の奥では、別の注文の椅子も同じ機械で加工されていた。
💼「木材とこの職人の作業時間は、この机のものだとはっきり言える。でも家賃や電気代は、他の注文の家具にも使われている。同じ扱いはできない」
🦉「他にも、今、注文を抱えているんですか」
桧山棟梁は椅子の方をちらりと見た。
🏢「椅子が2脚と、本棚が1つ、今月中に納品予定です。あの機械はどの注文でも使っています。電気代を机だけのものとは言えませんね」
はっきり言えるものと、そうでないもの
カイロウは、机の横に積まれた別の注文の木材にも目をやった。椅子2脚分と本棚1つ分の木材が、それぞれ別の場所にまとめて置かれている。たしかに、工房の照明も機械も、複数の注文で共有されている。
🦉「この机のものだと言い切れる費用と、みんなで使っている費用は、分けて考えるということですか」
💼「そのとおり。はっきり跡付けられる費用と、複数の注文にまたがる費用を、まず区別する。それが原価を考える最初の一歩だ」
桧山棟梁は、値付けに悩んでいた理由に思い当たったようだった。今まで、5万円に自分の勘で1万円を上乗せして値段を付けていたのだという。
🏢「共有の分をどう扱うか、考えたことがありませんでした。木材と手間だけ見て、あとは勘で上乗せしていました」
カイロウは、材料費と職人の手間だけを見ていた自分の考えが、まだ半分しかできていなかったことに気づいた。机だけを見ていては、工房全体で共有している費用の存在が見えなかったのだ。
次に知りたいこと
工房を出たあと、カイロウは先輩に聞いた。
インプット(冒頭プレビュー)
この章の試験での位置づけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所属エリア | Area I:ビジネス分析 |
| Blueprint参照 | Area I-D-1〜5(原価計算・管理会計の概念) |
| エリア出題比率 | 40〜50%(BAR最大の配点エリア) |
⏱ 読了目安: 約142分(インプット教材のみ・個人差があります)。一度に読み切る必要はありません。キリのよいセクションで区切って進めてください。
本章が扱う原価計算・管理会計の概念(I-D)は、後続の投資判断・資本予算(I-E)で使う「原価情報」そのものを作る土台にあたる。
前提知識 --- この章に入る前に、分かっているとラクなこと
| 前提知識 | なぜ必要か |
|---|---|
| 財務諸表上の資産・費用の基本区分(B/SとP/Lの対応関係) | 製造原価がいったん資産(棚卸資産)として計上され、販売時に費用化される流れの前提になる |
| 変動費・固定費という原価行動パターンの基礎区分 | 本章で学ぶ原価分類全体を貫くもう一つの軸になる |
| 製造業の棚卸資産が原材料・仕掛品(Work in Process、WIP)・製品の3段階に分かれること | 本章冒頭の原価分類・製造原価計算の前提になる |
| 単純な比率配分(総額をある基準数量で按分する計算) | 製造間接費の配賦は、この計算パターンの応用にすぎない |
これら4つの前提は、本章を通じて繰り返し使う共通言語にあたる。たとえば変動費・固定費の区別が曖昧なまま2-1に進むと、製造間接費の内訳を見ても何が固定費で何が変動費かを判断できなくなる。先に共通言語を揃えておくことで、本章の時間を原価計算の考え方そのものの理解に使えるようになる。特に3つ目の「原材料・仕掛品・製品の3段階」は、2章の製品原価・期間原価の区分と、4章の完成品換算量の両方で繰り返し前提として使われる。
1. なぜこの論点が必要か(Why)
【BAR Area I:ビジネス分析 の全体像】
I-A 財務諸表分析 → I-B 将来情報分析 → I-C 業績指標分析 → I-D 原価計算・管理会計 → I-E 投資判断・資本予算
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← 今ここ(本章)
I-A・I-B・I-Cは、すでに出来上がった財務数値を「外側から」読み解く視点だった。本章のI-Dは視点を反転させ、その数値がそもそも工場の中でどう組み上がるのかという「内側の設計図」を扱う。次のI-E(投資判断・資本予算)は、ここで組み上げた原価情報を使って意思決定をする段階であり、本章はその土台になる。
FARの財務会計には「これが正しい処理」という単一のルールがあるが、原価計算に法律で定められた唯一の正解はない。ある工場は注文ごとに原価を積み上げ、別の工場は工程全体をならして原価を求める。どちらも正しく、選ぶかどうかは生産の実態次第である。BARが問うのは公式を当てはめる力ではなく、目の前の生産形態にどの方式が対応するかを見抜く力であり、この章の10論点はその判断軸を一つずつ手渡すために存在する。
続きとアウトプット演習・整理ノートはBAR教材(購入者限定)でご覧いただけます。
§ Summary Notes — BAR
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