KAIRO
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6Chapter 6

リスク評価と不正・追加手続の計画

Part 2: リスク評価と対応計画の策定Blueprint Area II 対応・配点 25-35%読了目安 約94分

章構成を新カリキュラムに刷新しました。旧構成との対応は移行ガイドをご覧ください。

ストーリー(冒頭プレビュー)

🦉 Episode 6: 休まない人

登場: 🦉 カイロウ(新人)/💼 先輩(監査部門)/🏢 橋本さん(クライアントの経理担当)

5年、休んでいない

北条商事の監査は、企業を知るための聞き取りが中心の初日だった。朝からずっと曇り空で、経理室の照明は少し薄暗い。窓際には古い金庫が置かれ、その上に使い込まれた出納帳が何冊も積まれている。壁のカレンダーには、休暇の予定が一つも書き込まれていなかった。カイロウは橋本さんに、現金の管理の仕方を尋ねていた。

🦉「毎日の現金の締めと、通帳の残高確認は橋本さんがされているんですね」

🏢「はい、入社してからずっと私がやっています。他の人に任せると、かえって間違えるので」

🦉「金庫の鍵も、橋本さんがお持ちなんですか」

🏢「そうです。経理は私一人なので、開け閉めも記帳も全部一人でやっています」

🦉「繁忙期で忙しいときも、誰かに手伝ってもらったりは」

🏢「余計に一人でやったほうが早いので、結局私がやってしまいますね」

🦉「有給とか、代わりの人に頼むことはないんですか」

🏢「そういえば、もう5年くらい休んでいないかもしれません。任せられる人がいなくて」

カイロウはその場では素直に感心した。取材を終えて廊下に出ると、先輩にその話をした。

🦉「先輩、橋本さん、5年も休まず一人で現金を見ているそうです。すごい責任感ですよね」

見方が変わる一言

💼「その話、メモした?」

🦉「はい、感心したので書いておきました」

💼「感心する前に、もう一つ考えてほしい。現金を数える人と、通帳を確認する人が同じなのは、誰かが気づく仕組みがあるということ?」

🦉「言われてみると、橋本さん一人で完結しています」

💼「しかも5年間、誰にも代わってもらっていない。もし途中で何かのつじつまを合わせていたとしたら、それに気づく人は誰だ?」

カイロウは息をのんだ。金庫の前で聞いた「任せられる人がいない」という一言が、急に別の意味を持って聞こえてきた。

🦉「休まないのは、責任感じゃなくて、誰にも見せられない理由かもしれない、ということですか」

💼「決めつけるのはまだ早い。ただの働き者かもしれない。リスク評価は疑うことじゃない、どこに注意を向けるかを決める作業だ」

🦉「橋本さんを疑うというより、その場所をよく見ておく、ということですね」

💼「そういうことだ。気づいたこと自体は良い着眼点だった」

廊下の窓から、北条商事の倉庫が見えた。トラックが一台、荷物を積み込んでいる。カイロウはそののどかな光景と、さっきの会話とのギャップに、まだ慣れずにいた。

🦉「見るべき場所は、他にもまだありそうですね」

💼「ある。今日聞いた話だけでも、いくつか気になる点があった」

インプット(冒頭プレビュー)

この章の試験での位置づけ

項目内容
所属エリアArea II ---リスク評価と対応計画の策定(Assessing Risk and Developing a Planned Response)
Blueprint参照Area II-D(リスクの評価と追加手続の計画)
エリア出題比率25〜35%

Area II-Dは、これまでの章で集めた情報(企業の理解・内部統制の理解)を「リスクの評価」という結論に変換し、それを「どんな追加手続を、どれだけやるか」という具体的な行動計画に落とし込む工程である。監査の中で最も判断力が問われる部分であり、出題も集中しやすい。


前提知識 --- この章に入る前に、分かっているとラクなこと

前提知識なぜ必要か
企業とその環境の理解・リスク評価手続の実施結果本章のリスク識別は、これらの手続で得た情報を土台にするため。
経営者の主張(アサーション)リスクをどの主張に結びつけるかが、本章の中心的な作業になるため。
内部統制の基本的な仕組み(統制環境・統制活動など)統制リスクの評価や、統制に依拠するかどうかの判断の前提になるため。
十分かつ適切な監査証拠の概念追加手続の設計は、最終的にこの証拠基準を満たすことを目的にするため。
財務諸表全体としての重要性の判断リスクの重要性判断や、その後の見直しの考え方と並行して働く概念であるため。

1. なぜこの論点が必要か(Why)

【監査の全体フロー】

契約 → 計画 → リスク評価 → 内部統制の理解 → 統制テスト → 実証性手続 → 完了手続 → 報告
                                        ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
                                        ← 今ここ(本章) →

前章までで、監査人は監査計画を策定し、企業とその環境を理解し、内部統制の仕組みを理解した。本章では、それらの情報を統合してリスクを評価し、統制テストと実証性手続のどちらに、どれだけ重点を置くかを決めていく。次章以降、実際の統制テスト・実証性手続の実施へと進む。

リスク評価は、多すぎても少なすぎても困る「見積もり」の作業である。リスクを過小評価すれば、本当に虚偽表示が潜む領域を素通りしてしまう。逆に過大評価すれば、リスクの低い領域にまで過剰な手続を積み上げ、限られた監査時間を浪費する。本章で学ぶのは、この見積もりを場当たり的な勘に頼らず、体系立てて行うための考え方である。

以下では、工業用機械部品を卸売するY社を例に考えていく。Y社は非上場企業で海外に製造子会社を持ち、主要な収益は機器本体の販売と据付・保守サービスを組み合わせた複数要素契約から生じる。


2. リスクの識別と評価(Identifying and Assessing Risk)--- 監査人の「保安検査」

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